欧米では、一度建てた住宅は長く手入れをして、何代にもわたって住むという文化が根付いています。ところが、日本では築30年ほどで建て替える人も多い傾向があります。日本では高度経済成長期から始まった「つくって壊す」スタイルから、「いいものを長く使う」文化へ転換させようとして2009年に施行されたのが、「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」です。
近年よく聞くこの長期優良住宅とは、そもそもどのような家を指すのでしょうか。ここでは、長期優良住宅とはどのようなものなのか、その内容や認定の流れについて解説します。
長期優良住宅とは、長期間良好な状態で使用できる住宅を指します。一定の基準を満たし、長期優良住宅と認められることで、税制面や融資での優遇などを受けられます。日本では、前述のように築30年前後で建て替えや大規模リフォームを行うのが一般的です。住宅の売却における建物の価値査定では、木造の戸建ての場合、築25年ほどでほとんどゼロに近い状態になります。
短期的に建てては壊すことを繰り返せば、個人の資産を浪費するだけでなく、地球環境にも影響を与えかねません。これらの状況を打開するため、長期優良住宅の普及の促進に関する法律が施行されました。この法律では、長期優良住宅の認定の手続きや基準について定められています。この法律に則り、認定された住宅が認定長期優良住宅と呼ばれているのです。
長期優良住宅に認定されることで、住宅ローンの税制優遇や金利の引き下げ、そのほか助成金受給や補助金受給といったメリットが享受できます。例えば、住宅ローン減税において一般的な住宅は10年間で最大400万円の控除が受けられますが、長期優良住宅では10年間で最大500万円までです。住宅ローンの金利においても、住宅金融支援機構のフラット35を利用する場合、長期優良住宅ならば金利が年0.25%(※金利は変更となる場合があり、掲載の金利は2019年2月時点のものとなります)引き下げられるフラット35Sというプランが利用できます。
その他、長期優良住宅の税制優遇、認定基準などについて、詳しくはこちらをご覧ください。
>>せっかく建てるなら長期優良住宅!その基準と税制優遇とは
長期優良住宅に認定されるための申請は、建築主が行います。手続きは住宅会社が代理で行うこともできますが、申請者は建築主です。まず、登録住宅性能評価機関に技術的審査の依頼を行います。基準を満たしていることが確認されると、評価機関から適合証が交付されるので、それを持って所管行政庁へ認定申請を行いましょう。住宅の着工は認定後となります。
また、工事が完了した後は維持保全計画に基づく点検を行い、必要に応じて調査、修繕、改良を行います。
・認定申請書
・設計内容説明書
・各種図面・計算書
・登録住宅性能評価機関の適合証
・建築確認に関する申請図書(建築確認審査を同時に行う場合)
長期優良住宅に認定されると、維持保全計画書に基づき、完成から30年以上にわたり必要に応じて点検や修繕を行います。1回目の点検は工事完了から10年以内、2回目は1回目の点検から10年以内、3回目の点検は2回目から10年以内です。点検時に補修が必要であることが分かれば補修や改良を行い、それらの記録はすべて保存しておく必要があります。
長期優良住宅に認定されることで、税制面で優遇されたり、補助金が受け取れたりといったメリットを享受できますが、長期優良住宅にはいくつかの注意点があります。住宅会社によっては、基準を満たした住宅を建てることにより、長期優良住宅の方が一般的な住宅よりも建築費が多くかかってしまうこともあります。
また、認定されると住宅の点検や修繕などが必須になるため、住宅の維持保全に手間やコストがかかる点は留意しておきましょう。
長期優良住宅の普及の促進に関する法律の施行から10年、これまでに長期優良住宅はどれくらい建築されたのでしょうか。(出典:国交省「長期優良住宅建築等計画の認定実績」(平成30年3月末時点)、住宅着工統計(平成29年度))
長期優良住宅 | 新設住宅(一戸建て)全体に対する割合 | |
---|---|---|
2009年度 | 5万6,146 | 17.1% |
2010年度 | 10万1,836 | 23.8% |
2011年度 | 10万2,869 | 24.0% |
2012年度 | 10万2,925 | 23.1% |
2013年度 | 11万5,756 | 23.5% |
2014年度 | 9万8,704 | 24.1% |
2015年度 | 10万3,542 | 24.8% |
2016年度 | 10万8,085 | 24.9% |
2017年度 | 10万5,080 | 24.6% |
単位:戸
2009~2017年度のデータを見てみると、新しく建てられた長期優良住宅は、2010~2017年まで毎年およそ10万戸で推移していることが分かります。また、平成29年度のデータでは新築住宅のおよそ4戸に1戸が長期優良住宅で建てられています。
良質な住宅を増やすことを目的としてつくられた法律によって、誕生した長期優良住宅。この認定を受けることで、税制や住宅ローンの金利面での優遇があることが分かりました。しかし、長期優良住宅にすることによって、建築コストが高くなる場合があることや、将来のメンテナンスをしっかり行う必要があることも忘れてはいけません。長期優良住宅にするかどうか、迷ったときには住宅会社に相談してみましょう。
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