長く暮らすための住まいとして選ぶのなら、戸建てとマンションどちらがいいのか、住宅購入前に多くの人が悩むことです。戸建てとマンションの住みやすさや暮らしの満足度など、比較する項目はいくつかありますが、それぞれのランニングコストからも検討してみましょう。ここでは、戸建てとマンション、それぞれどのようなランニングコストがかかるのかご紹介します。
まずは、マンションのランニングコストについて考えていきましょう。マンションは、たとえ現金一括で購入したとしても、管理費や共益費、修繕積立金といった費用が毎月かかります。車を所有しているのであれば駐車場代金もかかるでしょう。国土交通省が2011年に策定しているマンションの修繕積立金に関するガイドラインでは、築年数とマンションの階数と延べ床面積による目安金額が設定されています。
月あたりの修繕積立金の目安
マンションの階数 | 建築延べ床面積 | 平均値 |
---|---|---|
15階未満 | 5,000平方メートル未満 | 218円/平方メートル |
5,000~10,000平方メートル | 202円/平方メートル | |
10,000平方メートル以上 | 178円/平方メートル | |
20階以上 | 206円/平方メートル |
(表=2011年度 国土交通省『マンションの修繕積立金に関するガイドライン』より)
上表の平均値にマンションの専有面積を乗ずると、おおよその修繕積立金が分かります。例えば、総階数20階以上のマンションで専有面積が80平方メートルのマンションを購入したとすると、修繕積立金の目安は1万6,480円です。また、修繕積立金は築年数が増えるとともに費用も上がる傾向にあり、将来に渡って同じ金額という保証はありません。
修繕積立金には均等積立方式と段階増額積立方式があり、段階増額積立方式の場合には修繕資金の需要に応じて積立金が徴収されます。段階増額積立方式のマンションを購入すると、マンションの大規模修繕が行われるたびに修繕費負担が大きく増えていく可能性もあるのです。
もう一つ、マンションには管理費がかかります。不動産経済研究所が2011年に行った「首都圏マンション管理費調査」によると、1平方メートルあたりの平均は約216円となっています。専有面積が80平方メートルのマンションでは、管理費が毎月1万7,280円ほどかかるということです。管理費と修繕積立金を合わせると毎月3万円以上のコストが必要になります。
さらに、マンションの場合にはいずれ建て替えの問題が出てきます。建て替えは簡単に行われるものではありませんが、修繕積立金では建て替えの費用は出ません。たとえ、自分には資金に余裕があったとしても、マンションの住民すべてがそうであるとは限りません。建て替えの選択を迫られたとき、建て替え派と建て替えをしない派で争いが起きてしまう可能性もあります。
では、戸建てにはどのようなランニングコストがかかるのでしょうか。戸建てはマンションとは違い、建物全体の手入れも修繕も所有者の意思で行われます。また、マンションよりも維持のための費用が細かく必要になります。どのような費用がどのぐらいかかるのか見てみましょう。
一般的な戸建てにかかる維持費用例
種類 | 内容 | 1回あたりの費用目安 |
---|---|---|
防蟻消毒処理費用 | シロアリ被害を予防するための消毒。10年に1回を目安に行う | 10万~20万円 |
塗装 | 外壁や屋根の塗装。10年~15年ごとを目安に行う | 150万~200万円 |
給湯器の交換 | 給湯器の寿命による交換。8~10年で交換 | 10万~30万円 |
水回りのリフォーム | トイレやキッチン、お風呂などの水回りのリフォーム。20~30年が交換の目安 | 50万円~ |
(表=MORIZOU online編集部)
この他にも、庭の管理や外構のリフォームといった費用がかかってきます。戸建ての場合、マンションとは異なり毎月ではなく10~30年ごとの修繕時期にまとまったお金が必要になるという特徴があります。戸建てでは、マンションと違いリフォームも自由にできますので、外壁や屋根の塗装の時期には外観を変えることも可能です。水回りについても、もともとの設備と同じサイズや形にこだわる必要はありません。マンションとは違い、最新の設備を間取りや規定サイズを気にせず導入することができます。
修繕管理費に月3万円かかるマンションと、10~30年ごとに100万円以上の修繕費がかかる戸建て、どちらのほうが維持費面で優秀なのでしょうか。
毎月3万円を30年間支払うと1,080万円、60年では2,160万円になります。途中で修繕積立金の額が上昇する可能性を考えると、費用はさらにかかるでしょう。また、新築から60年ほどで建て替えの問題もでてきます。建て替え問題に揺れるマンションは中古でも売却しづらく、資産価値が下がってしまう可能性もあります。
10年ごとに定期メンテナンスを行ったと想定すると、30年でも修繕費は1,000万円未満です。新築から60年経つと建て替えや取り壊しの選択肢も出てきますが、どうするかは所有者の自由です。所有者の死後、家族に相続された場合にも、「リフォーム」「建て替え」「売却」など、いずれの選択もできます。リフォーム内容にも制限がありません(大規模リフォームの場合は建築基準法を守ったリフォーム工事の計画と申請が必要となることがあります)。
東京都心部などの都市中心部であれば、人口減の影響を受けにくいため地価も比較的下落しにくく、資産価値が下がる心配も少ないでしょう。将来家族に残す資産として考えることもできます。
マンションと戸建てを比較すると、ランニングコストに優れているのは戸建てであることが分かりました。もちろん、戸建てでも建物によってはさらにコストがかかる場合もあります。それでも、将来を視野に入れると戸建ては自由度が高く資産としても優秀という大きなメリットが出てくる可能性があるでしょう。「マンションにするか」「戸建てにするか」を迷ったときにはランニングコストと将来についてよく考え、ご家族にとって将来にわたってメリットの大きい方を選んでみてはいかがでしょうか。
>>【無料小冊子プレゼント】「本当にいい家」に住みたい人に知ってほしいこと
【オススメ記事】
・新築住宅にかかる税金について。消費税や固定資産税はいくらかかる?
・建ぺい率・容積率にカーポートは影響する?カーポートの延床面積の考え方
・二世帯住宅の間取りが知りたい。50坪・40坪・30坪で変わる家づくり
・温泉旅館のような家づくりの工夫。和モダンで最上級のリラックスを
・建売住宅?注文住宅?それぞれのメリット・デメリット