土地の売買を検討するうえで、価格を把握するのは重要なことですが、路線価や基準地価など、土地に関する価格にはさまざまな種類があります。その中でも、今回は「公示価格」について解説していきます。公示価格の決定方法や活用の仕方、さらに近年の動向を見ていきましょう。
公示価格とは、国土交通省の土地鑑定委員会が、地価公示法をもとに公表する土地価格のことを指します。公表時期である毎年3月下旬には、新聞やニュースなどのメディアで公示価格が取り上げられることもあり、聞いたことがあるという人も多いのではないでしょうか。公示価格を決定するためには、まず複数人の不動産鑑定士が、1月1日時点の全国各地における標準地1平方メートル当たりの地価を鑑定します。
その結果をもとに、土地鑑定委員会の審査を経て決定したものが、公示価格として認定されます。ちなみに、2019年は約2万6,000もの標準地で鑑定調査が行われ、「山野楽器銀座本店」が位置する東京都中央区銀座4-5-6が、1平方メートル当たり5,720万円でトップの価格となりました。次いで中央区銀座5-4-3「対鶴館ビル」(4,910万円)、中央区銀座2-6-7「明治屋銀座ビル」(4,260万円)、中央区銀座7-9-19「ZARA」(4,200万円)と、公示価格の上位4位までを銀座が独占しています。
公示価格は、土地取引を行う際に活用されますが、これには「適正価格での土地取引を実現する」という目的があります。土地取引において、価格がその土地に見合っているかどうかは一般消費者には分かりづらいものです。提示されている価格を信じるしかないため、相場をはるかに上回る価格で購入してしまったり、低価格での売却により損をしたりすることも起こりえます。
そうした事態を回避するために、有効となるのが公示価格です。不動産鑑定士が算定した適正地価を参考にすることで、相応の取引額が設定しやすくなります。公示価格はほかにも、相続税と固定資産税の評価をはじめ、国有財産や不動産の鑑定、企業会計の時価評価などにも活用されているのが特徴です。なお、公示価格は国土交通省ホームページの土地総合情報システム内にある、国土交通省地価公示・都道府県地価調査から誰でも確認することができます。また、役所や図書館でも閲覧が可能です。
2019年発表の公示価格では、全用途平均が4年連続で上回っており(+1.2%)、全国的に地価が上昇傾向にあることがうかがえます。用途別では、住宅地(+0.6%)の公示地価は2年連続、商業地(+2.8%)は4年続けて上昇しています。東京・大阪・名古屋の三大都市圏でも、全用途平均と住宅地、商業地のすべてでプラスに転じています。
地方においても、住宅地の地価は27年ぶりに、また商業地も2年連続で上昇しています。これは、全項目でプラスとなった札幌市、仙台市、広島市、福岡市からなる4都市が大きく関係しているようです。4都市を除いた地方では、全用途平均と住宅地ともに下落傾向にあるものの、下落率は年々縮小しています。
加えて、1993年以来下落し続けていた商業地が横ばいになるなど、三大都市圏から地方へ、プラスの流れが生まれているといえるでしょう。また、都道府県別で見ても地価は明らかに上昇傾向です。2019年の住宅地価変動率でプラスに転じたのは、前年と比べて4道県増となる18都道府県でした。さらに、前年は10県であった下落率1%以上の県数が、2019年は7県に減少しています。
地価上昇の動きは商業地価変動率も同様で、前年プラス1となる22都道府県が上昇しています。8県が1%以上下落しましたが、前年の14県よりも少ない件数となっています。
住宅取得に関する支援策や低金利状態の継続なども関係し、住環境の整った地域が根強い人気を集めています。一方で、商業地でも外国人観光客増加による新規宿泊施設の進出や、主要都市におけるオフィスの空室率低下など、さまざまな要因が重なり合う中で土地の需要が拡大傾向です。近年の公示価格上昇の背景には、住宅地と商業地の需要増加が大きく関係しています。今後の公示価格の行方を判断するには、景気情勢も注視していくとよさそうです。
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