木目の美しさやぬくもり、爽やかな香りが心地よく五感を刺激する木の家。天然木には調湿や断熱効果など室内環境を快適に保つさまざまな機能があります。
今回はその中でも、木の香りに注目。天然木特有の心地よい香りは、樹木から放出される「フィトンチッド」という成分によるものです。近年、このフィトンチッドの持つさまざまな力について研究が進んでいます。
木の家はなんとなく居心地がいい、その理由は科学的にも解明されてきているようです。
森林や、木々の多い公園での心地よさは誰しもが一度は味わったことがあるでしょう。実は、私たちが森林浴でリラックスできるのは、樹木が出すフィトンチッドの力が作用しているからなのです。
フィトンチッドとは、森の木々が自分でつくり、放出している芳香成分。ロシア語で植物を意味する「フィトン」、殺菌するという意味の「チッド」から成り立っています。植物が傷つくと、傷口を守るために殺菌したり、害虫などを近寄らせないようにする物質(フィトンチッド)を出すことに由来しています。
樹木が自らの身を守るために作用するフィトンチッド。その働きは、私たちの心身にも様々な影響をもたらすことが分かってきています。
森の芳香成分フィトンチッドには、私たちが日常の生活環境の中で感じるストレスを抑制してくれるリラクゼーション効果があります。
森林浴における調査では、ストレスホルモンの代表とされるコルチゾールが減少。交感神経の興奮を抑え自律神経を安定させることで、緊張を和らげることが分かっています。心を落ち着かせる香りとしてウッド系のアロマオイルの人気が高いこともうなずけます。
リラックス効果に加え、免疫機能の改善など予防医学的効果も報告されています。
フィトンチッドの作用により、免疫細胞の一つ、NK(ナチュラル・キラー)細胞が活性化し、抗がんたんぱく質が増加するということが、(国研)森林総合研究所の調査により明らかになっています。NK細胞はがん細胞への攻撃に効果的に働くことから、がんの予防効果が期待されています。
また、血圧の減少、動脈硬化を防ぐ血中アディポネクチンの濃度を高める作用なども報告され、生活習慣病の予防効果も期待されています。
山や森には様々な動物が住み、臭いの原因となる糞尿や死がい、腐敗した植物などがたくさんありますが、爽やかな臭いが広がっています。動物園のような独特の臭いがしないのは、フィトンチッドの消臭効果によるものです。フィトンチッドの消臭作用は悪臭成分に付着し、無臭の安定化物質に変化させる働きがあります。
木の家でも同様に、フィトンチッドがペットや生ゴミなどの臭いを中和し、快適な空気環境に整える作用があります。
自らの身を害虫から守るために植物が発散させるフィトンチッド。私たちの暮らしにおいてもその防虫効果を発揮してくれます。
フィトンチッドの成分は樹種によって異なりますが、特にひのきに含まれるフィトンチッドは、アレルギー疾患の一因とされる家ダニに対する防虫効果が高く、繁殖を抑える作用があるとされています。また、シロアリに対しても、ひのきやヒバのフィトンチッドに有効性があり、住宅の構造材として使用することで躯体の耐久性も高まります。
フィトンチッドの抗菌効果は、特に病原菌である大腸菌や黄色ブドウ球菌などに作用することが分かっています。抗酸化作用もあることから、押し寿司を葉で包んだり、おにぎりを木の皮で包むなど、食品の保存にも昔から植物が利用されてきました。
自然界における樹木の生命力の源ともいえるフィトンチッドは、伐採され木材となった後も放出され続けます。特にひのきはフィトンチッドの含有率が高く、ひのきを使った家は建ててから時間が経っても、森林浴をしているような清々しい香りが長く続きます。
私たちの暮らしの基盤となる家を、より快適で、健やかな環境にしてくれるフィトンチッド。注文住宅を建てる際は、素材にもこだわってみてはいかがでしょうか。
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